「コロナ禍での新たな学校歯科保健指導の構築」実施報告

※本事業は新潟市地域活動補助金を活用して実施しました。


令和3年度

学童期は、口腔保健における基本となる生活習慣を身につける重要な時期である。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響下(コロナ禍)では、従来から広く実施されてきた対面での染め出し剤を用いた歯磨き指導などの歯科保健指導は困難になった。コロナ禍での新たな歯科保健指導のあり方として、タブレット端末を用いた方法が有効であると考える。また、個々で楽しみながら学習できるコンテンツにすることで、一過性になりやすい学校歯科保健教育の効果を継続的なものにすることができると考えた。今年度から歯科保健教育モデル校となる新潟市立岩室小学校でモデルケースを実施しタブレットを使用した歯科保健指導を実施した。

 

【実施内容】

日時:令和4年1月20日 10:40-11:25 / 1月21日 10:40-11:25

場所:新潟市立岩室小学校

対象:1年生19人(1月20日)、2年生24人(1月21日)

内容:(1)動画(10分前後)

   (2)クイズ(15分)

   (3)タブレットを使用した保健学習(10~15分)※Qスキャンによる歯垢確認も実施

   (4)まとめ(5分)

 

<評価>

※参加した児童には、以下のアンケート調査を実施。

1.このじゅぎょうは ためになりましたか?

2.これから歯をよくみがこうとおもいましたか?

3.これからフッかぶつせん口をきちんとしようとおもいましたか?

4.これからおやつのたべかたを気をつけようとおもいましたか?

※「はい」「いいえ」「どちらでもない」の三択から回答

 

アンケート調査では、全ての項目において「はい(100%)」と回答していた。タブレットや動画、歯垢検知器等を用いた保健指導により、児童の口腔保健の必要性に対する意識が変化するとともに、行動変容に良い影響を及ぼしたと考えられた。

 

【令和3年度事業の成果及び課題】

アンケート結果から、児童への教育効果は一定程度あったと評価できる。保健指導のメニューについては感染対策に配慮した内容となっており、コロナ禍でも十分実施可能と評価した。

ただし、使用した保健指導用の資料が若干一部児童にとってレベルが高く、導入方法に配慮が必要であった。改めて現場職員の意見を伺いながらバージョンアップしたものを作成していく必要があるだろう。また、他学年版、特に高学年向けのプログラムの構築も必要と考える。

今後の市内他校への普及に関しては区役所、または教育委員会と相談を踏まえ、保健指導の申し込み方法の構築を検討していきたい。


令和4年度

前年度に引き続き、歯科保健教育モデル校となる新潟市立岩室小学校でモデルケースを実施しタブレットを使用した歯科保健指導を実施した。当初新潟小学校での事業実施も予定していたが調整が付かず見送りとなった。

また、若い世代(子どもたち)への情報発信のあり方をテーマに、歯科関係者向けの研修会も開催した。

【実施内容-1】小学校での歯科保健指導

日時:令和4年10月27日9:35-10:20/10月28日14:05-14:50

場所:新潟市立岩室小学校

参加者:2年生18人(10月27日)、5年生20人(10月28日)

内容

<2年生>

(1)絵本の読み聞かせ

(2)タブレットを使用した保健学習

(3)クイズ

(4)まとめ(アンケートを含む)

<5年生>

(1)DVD(歯肉炎予防)

(2)ブラッシングおよびデンタルフロスの使い方 

(3)タブレットを使用した保健学習〜歯肉炎予防のためにみんなで工夫できることや取り組めること~

(4)まとめ(アンケートを含む)

<評価>

5年生の学習後、生徒自身に歯肉炎予防にむけて頑張ることを2項目上げてもらい、1ヶ月後良くできたかどうかを自己評価で確認した。

その結果、総合計14人、28項目のうち、○は53.6%、△は42.9%、×は3.6%であった。デンタルフロスの使用については12人が頑張ることに取り上げ、○は41.7%、△は58.3%、×は0%であった。

 

<成果>

2年間の活動を踏まえ、新潟市歯科医師会、および新潟市教育委員会保健給食課と市全体への普及をテーマに打ち合わせを行った。その結果、手始めに作成した資料の一部を新潟市教育委員会保健給食課を通じ、児童・生徒が日常的に学習ソフトとして使用しているロイロノートで使用できるよう手配していただいた。

2年生の授業の様子

5年生の授業の様子


【実施内容-2】情報発信のあり方をテーマにした研修会

日時:令和4年11月1日19:30-21:00

場所:新潟大学歯学部

参加者:はーもにープロジェクト会員、新潟市歯科医師会会員、新潟大学歯学部学生:25人

講師:黒崎友介氏(新潟県職員)

   演題:アイデア・企画の作り方

講師:仲川しおり氏(新潟撫⼦撮影会代表兼モデル) 

   演題:SNSを使う 


【令和4年度事業の成果及び課題】

歯肉炎予防についての学習評価を行った結果、自己評価ではあったが成果は認められた。また、児童へのアンケート調査ではいずれの学年においても児童全員が授業内容を評価していた。

 

今回の新潟市歯科医師会や新潟市教育委員会との打ち合わせにより、市内小中学校への普及の流れを構築することができた他、令和5年11月に市内小中学校の全養護教諭を対象とした研修会で説明する時間を調整していただくこととなった。

 

若い世代へのSNSを用いた啓発について新たな視点を持つことができた。双方向の情報交換により結果的に情報が広がっていくようである。


令和5年度

本テーマの区切りの年度と位置づけ以下の事業を実施した。

 

【実施内容-1】小学校での歯科保健指導の実施

日時:令和5年11月13日 9:35-10:20

場所:新潟市立岩室小学校

参加者:4年生23人

内容

(1)動画(10分前後)

(2)歯磨き指導※デンタルフロス指導含む(10分)

(3)グループ学習〜歯肉炎予防のためにみんなで工夫できることや取り組めること〜(20分)

(4)まとめ(5分)

 

<評価>

学習後、事後アンケートを実施。その結果、23人全員が「授業はためになった。」と回答した。また、児童自身に歯肉炎予防にむけて頑張ることを2項目上げてもらい、1ヶ月後良くできたかどうかを自己評価で確認した。


 

【実施内容-2】タブレットを用いた歯科保健指導用の資料作成

新潟大学歯学部の学生の協力を得ながら新たな資料を作成。

 【実施内容-3】新潟市内小中学校への普及

(1)動画および資料の配付

3年間の活動を踏まえ、新潟市歯科医師会、および新潟市教育委員会保健給食課と市全体への普及をテーマに打ち合わせを実施。本事業で作成した、歯科保健に関する動画および資料を市内全小中学校で使用できるように構築していただいた。

 

(2)市内全小中学校の養護教諭を対象とした研修会での講話およびアンケートの実施

3年間の活動の成果を新潟市内全小中学校の養護教諭を対象とした研修会で解説。

また、同研修会に合わせ市内小中学校の養護教諭を対象にアンケート調査を実施。回答数は、小学校62校(58,5%)、中学校43校(76.8%)であった。調査の結果、各小中学校では定期的に歯科保健指導を実施していること、および、活用できる動画や資料を希望している実態が明らかとなった。


【実施内容-4】他市町村への普及

3年間で作成した動画・資料を新発田市、燕市に提供。市担当者との打ち合わせも実施。

【令和5年度事業の成果及び課題】

3年間を通してポストコロナ禍での歯科保健指導としてロイロノートを用いた動画や資料を作成してきた。新潟市内の全小中学校のみならず他市町村にも資料を配布することができ活用していただける状況となった。市内小中学校養護教諭へのアンケート調査を通じて、動画や資料を継続的に作成していく必要性が確認できた。

 

歯科保健事業は継続的な取り組みが前提となる。定期的に、たとえば歯科保健の月間である6月と11月に、学校を通じて児童・生徒への呼びかけを行っていただく必要があるだろう。